12日の相場は、日経平均は185円(1.1%)高となり、16900円台を6.01日以来、約3ヵ月半ぶりに回復した。
とは言え、多くの投資家の実感とはかなり違うだろう。
一つは、NT倍率(日経平均株価の東証株価指数に対する比率)が12.78倍と1998年3月以来となる高水準になったことと関係する。これの意味するところは、日経平均採用の225銘柄の方が東証株価指数(東証1部上場全銘柄が対象)に対し、相対的に高くなったということである。
注=この20年で言うと、NT倍率は13.5倍強から2005年には9.5倍弱まで下落、2009年に10倍台を回復、以降は、ほぼ一貫して上昇、12.78倍になった。
黒田日銀は、発足間もなくから巨額のETF(上場投資信託)買いを継続しているわけだが、7.29日にはこれを年6兆円に倍増させると決定した。こうした中、日経平均採用銘柄、特に日経平均寄与率上位銘柄を物色しようという動きが顕著なわけである。
日銀のETF買いが、ほとんどが日経平均連動のETFのようで(日経新聞8.13日朝刊16面)、このようなことになるわけである。

日銀が上場投信を買うというのは、これにより、日経平均なりTOPIXが上昇することを期待してのわけだが、結果は、日経平均のみ突出して上げるという困った事態を生み出したわけである。ならば、買う対象をもっと工夫すればよさそうなものだが、日銀なり、そのアドバイス機関に株式投資にそう造詣の深い方がいないであろうから、そうはならないわけである。

日銀が、低PER銘柄等、企業価値と比し割安な銘柄を買うという基本方針を公表、何らかの手を打てばいいわけである。少なくとも日経平均連動型投信より東証株価指数(TOPIX)連動型投信を買い対象のメインにすれば、多少は現在の異常事態は改善する。それでも、この場合、時価総額上位銘柄=大型株偏重になるから、中小型株にも恩恵をと考えるなら、単純平均株価連動型投信を買えばいいわけだが、おそらくそういう投信はない。

カルビーは2015年4月に5700円の最高値を付けた時点でPERは(算出法でかなり変わるが)40倍を大きく超えた。その後3770円まで下落、現在は4465円。
今、日銀ETF買いで大きく上げるファストリの今期予想PERは名目値で89.8倍、実質値で81.1倍。
日経新聞は8.13日付けの朝刊16面の記事で、ファストリの予想PERは86倍とギャップ(13倍)やH&M(23倍)とは「比べようもない水準」とし、「株価は平然と過熱感の漂う水準まで上昇している。」とまで書いている。
ようやく気付いてくれたかと快哉を叫びたい反面、この記事を書いた方の株価への見方・分析力には疑問を感じざるをえない。
PER86倍というのが?今よく考えてようやく分かった。8.12日の株価38080円を名目1株利益424.2円で割ると89.8倍のわけだが、8.05日の株価36640円を使うと86.3倍になるのだ。8.13日の朝刊に掲載の株価・PERに関する分析記事で、8.05日の株価を、そうと明示せずに使ったわけである。どうも、新聞や雑誌等は、自らの記事を書いた日が古いことを悟られたくないのか、こういう姑息なことをよくやる。いつ時点の株価で算出したかを明示せよと言いたい。
これは記者あるいは新聞社・出版社の誠実さの問題で、さらに重要なのは分析力だ。

ファストリの決算期は8月末である。日経記事は2016年8月期の数字を使ってPERを算出しているわけだが、8.12日(記事はこの日の株価で論じている)現在、決算の予想数字は2017年8月期の数字を使うべきなのは、拙著で繰り返し力説していることである。これが2016年8月期と大差ないのなら大きな問題ではないが、大差がありそうなのである。
8.02日発表の国内ユニクロの7月既存店売り上げが前年同期比18.1%増となったこともあり、野村証券は、今・来期の業績予想を引き上げている。四季報オンラインも来期はV字型回復を予想している。
来期予想実質1株利益は野村1069円、四季報オンライン849円である。この数字で計算すると来期予想実質PERは、それぞれ35.6倍、44.9倍となる。日経の数字90倍(株価を8.12日の数字に更新して再計算)が、いかにとんでもない数字か分かろう。
こういうことは珍しいことではなく、過去にも似たようなことを書いた記憶がある。要するに、日本ではPERをしっかり理解、使いこなしている人はほとんどいないということである。だからまた、PBRなどという、およそ使い物にならない投資尺度がなお幅を利かせる一因にもなる。

話が本筋からそれてしまったが、言いたいのは、それでもファストリの株価は割高、かつての最高値を付けたときのカルビーのように、反落して当然ということである。
そしてもっと言いたいことは、株価尺度から見て真の割安銘柄が買われるまっとうな相場に早く復帰すべしということである。

8月14日 22時22分記

相場見通し等については、簡単に後刻書く予定。
Secret

TrackBackURL
→http://kamakurayuusuke.blog134.fc2.com/tb.php/2557-5c990325