以前の家より収容力が増大したのをいいことに、「断捨離 」反対を掲げ、本や雑誌を溜め込んで行ったら、徐々に徐々に溢れ出て放置できない状況になりつつある。昔(20歳代前後)、恥ずかしげもなく書きなぐったものとか手紙類も、ごちゃごちゃなっていて、なんとかきれいに片付けたい。

それで整理に取りかかって、かなり捨てる本を選び出し、書棚等も多少はすっきりしたのだが、すっかり忘れていた手紙(友人からの物)が抜き身であって、つい読んでみた。

相変わらず「遅刻」と「偏食」の日々と推察しますが
としたうえで「読む本がなくて困っている」ので、「かねて尊敬するペダンティックな鎌倉兄に」「何かいいものがあったら紹介」してくれといった内容だった。

そう言えば彼に福永武彦の「風土」(か「死の島」)を読んだらと勧めたことがあり、その一事でどうも買いかぶられたようなのだ。
彼の方がよほど読書家のようで、私は福永なら、そういう重いのではなく「草の花」のような軽いのが本当は好きなのだが・・・

実は林真理子がおじさんが電車で読んでいるのは図書館の本ばかりとかおじさんは時代小説しか読まないとか書いている(最近発売された『週刊文春』の「夜更けのなわとび」)のを、かの友人の文章を読んで思い出し、これを書いている。

おじさんが図書館の本ばかり読んでいるのは、お金がないとか節約のため(そういう風な書き方だったように記憶する)というのは、かなりずれている(少しは当っているのは認めてもいいが)のではないかという思いがあり、これについて書きたかったのである。

人間、年を取ると回顧的になり、新しいことには個人差は大きいにせよ、大なり小なり抵抗感が強くなる。小説、音楽なども現代の物より昔の物がいいとなりがちだ。
ところが書店に行っても、そういう古い本は基本的に置いてない。ただし都心の大型店などに行くと、結構私も手を出すようなものも置いてあったりするが、そういう大型書店は都心以外にはほとんどない。
かくておじさんたちは図書館で本を探す仕儀になるというわけである。

私は日本推理作家協会編の「ミステリー傑作選」を長年愛読してきた。これはある年の推理短編から精選した短編から構成されている(毎年1冊刊行)。そこそこ面白いので、古いものはブックオフで買ったりもして、ほとんど漏らさず読んで来たわけだが、それがここに来てどうもおかしい。2005年くらいから、読めないのである。感性の違いとでも言うしかないのだろうが、いずれにせよ、面白くなく体が受け付けないのである。
そう言えば妻も同じようなことを言っていた。彼女は、私などと違って新らし物好きで話題作などに飛びつく方である。だから今年の芥川賞受賞作の「火花」、「スクラップ・アンド・ビルド」も早速『文芸春秋』を買って来て読んでいた。
読み終えても黙っているのでやはりなと思いつつ感想を聞くと「読後感が良くない」と言う。そう言えばこの人は3年前には「abさんご」(私などは題名で忌避してしまう)も苦労しいしい読み切っている!あの時も読んで損したと嘆いていたのを思い出した。

「大活字本」を愛読していると言っていた友人もいた。実は私も結構大活字本は読んでいる。ご存知ない方のために書くと、大活字本は目の不自由な方用に少部数印刷され主に図書館に置かれている大きな活字の本である。と言って友人も私も目が悪いわけではない。大活字本には、過去の有名な小説に加え、意外な作品が収録されていたりするからである
私は比較的最近これで井上靖の「流転」(作家としてデビューする14年前に書かれた時代小説。千葉亀雄賞受賞)や藤原審爾の「秋津温泉」を読んだ。「流転」は井上靖の才能の片鱗を見せてはいても彼の後年の歴史小説の傑作とは比ぶべくもない作品だったが、それでもああこういう作品だったのかと分かってよかった。「秋津温泉」は文学的評価は知らないが、個人的には久しぶりに自分にぴったりの面白い作品を読めて大満足だった。

いずれにしろ、私や私と同世代の男(女もそうかもしれないが)は、「読む本がなくて困っている」。

ちょっと期待しているのが、集英社創業90周年企画と銘打って、最近(5月から)刊行が始まった「冒険の森へ 傑作小説大全」だ。
>読書の愉悦にあふれた「冒険の森へ」が誕生、本当に面白い小説を選出。
とあリ、これまでの文学全集では無視されて来たような作品も数多く選ばれている。。
水谷準(卓球選手ではない)の「お・それ・みお」、橘外男「マトモッソ渓谷」、蘭郁二郎「地図にない島」など、『新青年』(私がこれの愛読者であることは以前に書いた)で活躍した作家の作品もある程度収録されている(残念ながら私はすべて読んでしまっているが)。
坪田譲二の「森の中の塔」などというのは一体どんな作品だろうと興味をそそられる。言うまでもないが坪田は「善太と三平」などの児童小説で知られる作家である。
北杜夫の「推奨株」も読んでみたい。佐藤愛子の本で北の株好きは知っていたが、こんな小説があるとは寡聞にして知らなかった。

清水義範の作品が「永遠のジャック&ベティ」など最低5作品も収録されているのには驚いた。最近、知人と話しているとき「バール」が話題になった縁で、図書館で借りる本を探しているとき「バールのようなもの」という清水の本が目に飛び込んで来て読んだ。以前「国語入試問題必勝法」なども読んだことがある。いずれもそれなりに面白いが、それ以上ではない。編集委員の好みなのだろうが、もっと面白いものがいくらでもあるだろうにの感を抱いたわけである。

入れて欲しかった作品をほんの一部だけ書かせてもらって終わりとしよう。

香山滋「海鰻荘奇談」
渡辺啓介「偽眼のマドンナ」
渡辺温「可哀想な姉」(「兵隊の死」が収録されている)
国枝史郎「八ヶ嶽の魔人」(または「蔦蔓木曽桟」)
戸川昌子の作品から何か。

9月26日 23時05分記

相場については27日に書きます。
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