投資尺度で最も重視すべきなのはPERだというのは、私の変わらぬ考え方であり、ゆえに私はこれをもとに種々改良を加えた鎌倉式修正PER理論を考案、普及を図ってきた(積もりな)のだが、何十年経っても、親の心子知らずというか、おろかな人が多いのか、私が無力だから(まあ、これに決まってるだろうが)なのか知らないが、全く事態は変わらず、相も変わらずPERの算出法すら理解できていないのではと疑わざるを得ない記事が氾濫している。

そういう事例を、この3ヵ月足らずで立て続けに3例も見せられたので、たまらず、これを書いている。

【事例1=元スーパー投資顧問・・・・の場合】
2013年5月08日付けで2481タウンニュース社を取り上げている。

>株価を見てみましょう。
460円、実績ベースでPER13.1倍、PBR1.1倍、配当利回り2.17%ですね。
市場平均よりは割安なものの、成長を考えると13.1倍ってのは微妙な所なのではないでしょうか?13.1年後に元を取れる(配当は別で考えてね)って事なので。(中略)
私の投資判断は「保留」となりました。

どこがおかしいか?

「実績ベース」のPERで、株価の割安・割高を判断してはいけない。確かに同社の2012.6月期の1株利益35.1円で計算するとPERは13.1倍になるが、2013.6月期では1株利益は53.8円(会社発表の数字)になりPERは8.6倍に大きく低下する。
しかも、この記事が書かれたのが5月なので、2ヵ月足らず経つと2013.6月期は前期になる。こういう場合、むしろ2014.6月期の方を重視すべきである。2014.6月期の1株利益は四季報予想で56.2円だからPERは8.2倍になる。
なお、1株利益は、全て名目値を使って算出されているが、鎌倉式修正PER理論に従って実質値(純利益は経常利益の6割とみなして算出)を算出、PERを計算しなおし実質PERを出すと、
2013.6月期=7.8倍
2014.6月期=7.4倍
要するに、この方がPER13.1倍として「微妙」(13.1倍はJQのこういう業種の銘柄としてはかなり割高と判断すべきと私は考えるが)としたのは、実際は7.8倍なり7.4倍になり、これをもとに常識的には「やや割安」と判断するところだったのである。

【事例2=梅屋敷・・・・の場合】
このブログの場合、「タカちゃん作成」なる「世界各国のバリュエーション表」(2013年5月版)(寄稿)が掲載されていて(6月19日付け)、それがおかしいということである。
この表には世界の主要国ほとんどのPER等が掲載されていて、こういうものは意外に、ほとんどお目にかかれないものなので、私も驚き喜び、利用させてもらおうかと見たわけである。

どこがおかしいか。

この表を見ると、一番上に日本があり、PERは24.6(倍)とある。ちなみに米国(アメリカ)17.0(倍)、ドイツ12.4(倍)である。こうした主要国のPERについては、私も過去何回か書いているので、読者の方も、これのおかしいのには気付かれた方も多かろう。いつ時点でいくらまでは、ほとんどの方が分からないだろうが、日本のPERがアメリカのPERと大差ない水準で、ほぼ推移しているというのは、理論を重視する投資家には、ほぼ常識であろう。だからアメリカ17.0倍に対し日本24.6倍というのを見たら、即おかしい!と反応できないといけないのである。ちなみに7.19日現在の日本のPER(東証1部全銘柄)は16.91倍である。

では24.6倍というのは何なのか?これは恐らく前期実績に基づくPERであろう。実際調べたら24.59倍、四捨五入で24.6倍だった。
しかし株式投資に当たってPERに前期実績値を使う人はまずいない。それより何より、アメリカやドイツの数字は今期予想値で間違いない。要するに日本だけ(ただしこの3カ国以外で今期予想値でない国があるかどうかまでは未調査)前期予想、アメリカやドイツは今期予想のPERのわけである。
しかし、せっかくの表なのに、こうした致命的ミスを犯し、しかも誰も気付いていない(少なくとも、そういう指摘・苦情が届いていないらしい)のは、恐ろしいことではないか。

【事例3=日経新聞の場合】

7月18日付け朝刊の「市場展望」という欄で「新興市場銘柄の株価上昇率」という表が掲載されている。
18位にランクインしているのが、我が?ブレインパッド(推)。
それはいいのだが、予想PER138(倍)とある。なんだ、この138倍!と驚いた。

どこがおかしいか?

私は7月14日付けの記事で、以下のようなブレインパッドの実質PERを掲載している。
 
          2013.6月期   2014.6月期
ブレインパッド   55.0倍       33.0倍

この違いは、どこから来ているのだろう。日経の場合、当然1株利益は名目値を使い、PERも名目PERであろう。そこで今期(2014.6月期)の名目1株利益29.9円を使ってPERを算出すると
1855(円)÷45.5(円)=40.8(倍)となる。
ウーム、理解不能・・・・
さらに推理を進める。例の自己株のせいか。しかし同社にはそういうものは無く、このため四季報と会社情報(日経発行)で、1株利益に差は無く、このためでないのは明らかだ。
詳しく書くと長くなるので、結論だけ書こう。
失礼ながら、これはこの記事を書いた記者氏が、事例1や事例2のレベル並みかそれ以下という推定で導き出されたとして推理してみた。

日経記事掲載の7.14日時点で今期は2014.6月期のわけだが、記者氏は2013.6月期、いやもしかしたら2012.6月期の数字を使用したのではないか。この場合、PERは2013.6月期の場合で62.0倍、2012.6月期の場合で63.3倍。ところで、同社は2012年末に1株を2株にする株式分割を行っている。このため1株利益は、これを考慮すると2分の1になる。この処理方法が、時代により会社(東洋経済、日経新聞等)により異なりやっかいなのである。
実際、2012.6月期の1株利益を、同じ純利益に基づきながら四季報は29.3円、会社情報は58.5円としている。四季報は株式分割を考慮、過去にさかのぼって1株利益を修正しているが、日経は例によって手間隙コスト重視で(私の推定、邪推?)修正を加えていないわけである。ここからが鎌倉先生の凄いところなのだが(笑)、記者氏は、株式分割したのだから1株利益は半分にしなくてはいけないと考え、自社のではなく秘かに信頼する東洋経済の四季報を見て(2012.6月期)1株利益29.3円を2で割り14.65円とし
1855(円)÷14.65(円)=127(倍)
を導き出した!?

138倍と127倍、少し違いますなあ。
しかし、合理的に考えると、以上の推論に大きな間違いはないと私は考える。138と127の差は、記者がさらに電卓操作を誤りでもなさったか。転記ミスでもなさったか。要するに信じられないようなミスにミスを重ねて、ああいう数字になったのだろう。

【PERの正しい計算方法を身につけよう】
以上のように、専門家かそれに近い方、責任ある立場の方でも、PERが正しく算出できないのが、日本の現状なのである。これははるか昔、拙著で、『大学教授の株ゲーム』で、この著者(のお一人)の大学教授氏が、「今期」が理解できていない、わけの分からない計算ミスをやっているということを指摘して以来、何の進歩もしていないことが、図らずも今回分かった。

今期とは?
今は2013年7月である。
6月決算会社=今期は2014.6月期
7月決算会社=今期は2013.7月期
8月決算会社=今期は2013.8月期
となるわけである。ん?という方はじっくり考えよう。ごく簡単なことなのだが、骨の髄まで叩き込んでおかないと、今はわかっても実際の投資行動においてミスを犯しかねないのである。
そしてまた、これは形式的なことで、株価は通常半年から1年先を見越して動くものである以上、期末が迫っている場合等は、今期よりはむしろ来期を重視すべしというは、鎌倉理論の強調するところである。

1株利益はどう計算するか?
事例1で挙げたタウンニュース社の場合

             経常利益    純利益     1株利益
2012.6月期  5.06億円  1.93億円   35.1円
2013.6月期  5.40億円  2.97億円   53.3円  

経常利益はたいして伸びていないのに1株利益だけは激増している。
また、経常利益は半減するのに純利益は2倍に激増するといったケースだってありうる。こういう予想が出た場合、株価はどう反応するか。通常は経常利益重視で株価は大きく下げるのである。である以上、特別利益[損失]に大きく左右される純利益は無視、経常利益の6割とみなした実質純利益をもとに実質1株利益を算出、これに基づいたPER(鎌倉式実質PER)を使用せよ、というのが、鎌倉式修正PER理論の骨子である。

ちなみに、タウンニュース社の場合、2012.6月期、経常利益が5.06億円なので純利益はこの6割=3.036億円とみなした実質1株利益を計算するわけである。こうすると、1株利益は35.1円(私が名目値と名づけるもの)ではなく55.2円になるわけである。同様にして2013.6月期の実質1株利益は58.1円になる。

お断り=事例1、事例2で、ブログ名を一部省略しました。本来、こういうのは明記すべしというが、私の立場ですが、長く残るものであるというブログの性質等を考慮、しかし読者等が検証できるようにという配慮もして、あえて、こういう表示方法にしてあることをお断りしておきます。

7.20日 12時16分記
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