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総選挙の大勝利に酔う安倍自民党総裁は、ついに原発の新設もありうると言い出した。

世の中に論争の的になる問題の多くは、白黒をつけることが難しい、どちらの見解が妥当なのか判断が難しいものが大半だ。日本の株価が来年上がるか下がるかなどは、その典型だ。しかし、中には、非常に簡単な問題もある。
日本において原発をどうすべきかは、まさにその類の問題だ。

少なくとも日本においては、原発は、早急に無くすべきなのである。
私が、そう考える根拠を、以下、ごく簡略に書いてみたい。

原発維持派の、原発を必要と主張する際の根拠は、以下のようなものだろう。

①原発に代わるエネルギーが無い。風力、地熱、太陽光などは取るに足らない発電量しかない、あるいは天候等に影響されたりして信頼度がない。

②原発はコストが安く、これをなくすと電力料金が大幅に上がる。これは企業の国際競争力を殺ぎ、また家計を直撃する。

③CO2排出量を大幅に減らすという国際公約達成のためには、原発維持が必須である。

④その他。
これの代表的なものには、核兵器を将来持つ、あるいは簡単に持つ能力があることを示すために、原発維持が必要だというものがある。

これらについて、反論する。

①について。
この議論は、一昔前まで特によく言われたものだ。しかし、今、原発はほとんど全部ストップした状態でも、日本のエネルギー供給が何とかなっていることで、ほとんど破綻してしまった論と言っていいだろう。もちろん、なお、風力や太陽光が風頼み、お日様頼みで安定性に欠けるという問題は残るわけだが、今後遅くも10年以内には地熱(これは安定性も十分ある)も戦力化するだろうし、蓄電システムと組み合わせるとか、安定性の問題をクリアする方策はいくらでもあるはずだ。さらに言えば、東京都の取り組み(天然ガス発電所の新設等)を含め、現在、発電能力アップの取り組みは種々なされており、原発抜きで早晩、エネルギー不足は解消されるだろう。

②これも、おかしな議論だ。かつて、原発が最も低コストと言っていたのが、その計算方法のいい加減さが指摘され、少なくとも何割かアップすることは、いまや常識だ。その上、そういう修正されたコスト計算でも、核のごみの処理費用、今回の過酷事故による全損害のコストへの加算等は、全くなされていない。彷徨う汚染土、原発周辺住民の精神的被害、地価の下落等々もそうだ。特に地価の下落は、巨額になるはずで、これを無視した議論がまかり通っていることには、あきれるばかりだ。
注=現時点で直ちに全原発を廃炉にし、その費用の会計処理も早急に電力各社にさせたり、それを踏まえた電力料金の改定を認めれば、電力料金は当然大幅に上がる。しかし、これは国家予算を投入して処理すべき問題である。
2030年代末までに廃炉の場合、実質的コスト増は、ほとんどないであろう。核燃料サイクルを含め、有象無象投入されている資金が要らなくなることも大きいのである。10年以内に廃炉の場合、まだ使える原発を処分するわけだから、減価償却費用が発生するが、それでも早く廃炉するかは、国民の判断である。

③これは、日本の特殊事情(地震・津波の危険のきわめて大きい国)で原発廃止を決定したので、CO2削減には他の方法で全力をあげて取り組むとして、なお不十分なところは、お許しを乞うしかないだろう。

④は、全く次元の違う問題をはらむので、今回は論じない。
原子力産業(東芝や日立にとっては重要な事業である)の維持、発展のために、原発を維持すべしという論もあるが、これも、今回は論じない。

以上、ごく大雑把に、原発維持派の根拠を、論破したわけだが、次に、私が積極的に原発を無くすべしと考える論拠について、書いてみたい。

一つは核のごみの問題である。

専門的なことは専門家にまかせるとして、ただ、これが始末におえないくらい厄介な問題であり、看過しえない問題であることは、議論の余地が無いだろう。最終処分場が、いつまでたっても決められないなか、なお原発を稼動させ、ごみを増やしていいわけはない。地下深くに保管する方法が、現時点での最有力方法のわけだが、これについても、今、その危険が言われだしている。以下、かなり雑な議論になるのをお許し願う(今、詳しく調べている時間が無いため)。数百年、数千年ならともかく数万年数十万年という途方も無い期間で考えるとき、地下深くに保管することは、安全とは言い切れないことが、はっきりしてきているのである。巨大地震による地殻変動、地下水の浸透等による容器の腐食リスクなどがある。たしか日本学術会議だったと思うが、数ヵ月前、地下深くでの保管のリスクを指摘、根本的見直しを政府に提言している。

もう一つは、地震・津波のリスクである。

今回の大震災で分かったことは、原発を稼動させている国で、日本ほど、地震・津波リスクの高い国は無いということである。しかも、大飯原発、敦賀原発、東通原発と、次々、活断層の上に原発があるらしいことが明らかになりつつある。しかも、これで終わりではないだろう。そもそも、活断層など、すべて調べつくされているわけではないどころか、知られていない活断層の方が多いのかもしれないのである。しかも、今ある原発は、原発推進派によるお手盛り判定で活断層でないという判断がされている地層の上に建設されているのだ。
それはそれとして、いつどこで震度6強以上の強い地震が起き、大きな津波が襲ってこないものでもないのである。
海外各国が、ドイツ以外は、ほとんどの国が原発を維持しようとしているからと言って、日本も同じでいいとはならないということを、私は強調しておきたい。日本ほど、原発に不向きな国は無いのだ。狭い国土に多くの人人が寄り添って住んでいるというのに、1ヵ所に5つも6つもの原発を集積させるという愚挙を犯してしまっている。

のどもと過ぎれば暑さ忘れると言うが、どうして、こうも日本人は過去を簡単に忘れるのだろう。

12月22日 23時43分記
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